
2020.02.06
「ただしイケメンに限る」わけではない! 女性が“理想のイケメン”と結婚しない科学的な理由

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久野 友萬先日、面食いを公言していたイモトアヤコが結婚した。彼女が選んだのは、どちらかといえば普通の人で小太りのTVディレクターだった。日和ったな、イモト、と私は思った。手越はどうした、とまでは思わないが、口で言うほど面食いではなかったのだなとは思った。
理想と現実というが、実際のところ、顔の好みとは何なのか。
イケメンが好きだとか言いながら、普通の顔の男性を選んだイモトは、実はイケメンが好きなんじゃなかったのではないか。よく観賞用と実用の違いと言うけれど、好みの顔とは科学的に何なのか。
美人・美男子の条件って?
個人の好き嫌いや社会的な要素(飢餓が起きる地域では太った女性が美人であるとか平安時代は一重の切れ長の目が好まれたとか)ではなく、大きく生物として絶対的な美人・美男子の条件はあるのかといえば、ある。
主に、以下の4つである。
・左右対称
・平均性
・性ホルモンマーカー
・肌の状態
美人・美男子の条件① 左右対称の顔
左右対称は言葉通りで、男女問わず、左右対称の顔が好まれる。
左右対称の身体や顔は生育に問題がなく健康である証拠だからと言われていたが、2014年に英国ブルネル大学のニコラス・パウンドらが4732人を対象に行った大規模調査で、顔の対称性と健康とは無関係であることがわかっている。ではなぜ対称性を好むかといえば、平均性に近づくためではないか? というのが最近の意見だ。
美人・美男子の条件② 平均性
平均的な顔を人は好む。
無個性に見える美人や美男子が多い(スーパーのチラシのモデルなどがいい例だ)のは、平均的な顔に近いから。
モーフィングという画像を重ね合わせる技術を使って、いろいろな人の顔をどんどん重ねていくと平均的な顔が生まれる。面白いことに、重ねる顔の数が増えれば増えるほど顔は左右対称に近づいていく。そして顔の数を多く重ねれば重ねるほど好感度が上がる=ハンサムや美女に見えてくるのだ。
今のところ、平均的な顔が好まれるのは、種としての遺伝子が安定するから、と説明されているが、実は車のデザインや動物の形でも、平均像を作ると好感度が上がる。真相はわからないが、平均的で左右対称の顔は好まれる。
美人・美男子の条件③ 性ホルモンマーカー
性ホルモンマーカーは男らしさ、女らしさを表す身体上の特徴だ。
男性は女性の女性っぽい顔(丸みを帯びた頬や唇、小さなあごなど)を好み、同性の評価も高いが、男性の男性っぽい顔(彫りが深く、あごがしっかりしているなど)は必ずしも評価が高くない。男性の顔は性シグナルの弱い中世的な顔の方が好まれる。
これは先進国で顕著で、衛生環境が悪い国では男らしい顔の方が人気がある。
美人・美男子の条件④ 肌の状態
肌の良し悪しも基準となるが、これは衛生的な点で選んでいると思われる。
きれいな肌は健康な証拠だ。
人は自分と似た顔の異性を好む
最近、研究されているのが自分と似た顔の異性を好むというもの。イケメンと美女のカップリングと同じように普通の人は普通の人同士カップルになり、太った人は太った人同士、背が高い人は背が高い異性を選ぶ傾向が高いのだ。
ある実験で、こんなことが行われた。
結婚しているカップルの写真を収集し、彼らとまったく面識のない人たちにカップルの男性と6人の女性の写真を見せて、「この中の誰が、男性の姉か妹に見える?」と聞く。そのあとで、「この男性の奥さんは誰?」と尋ねる。
すると、奥さんが「姉妹」として選ばれた確率と、「奥さん」として選ばれた確率は同じだったのだ。
ここからわかることは、カップルは外見的に似た特徴を有するということである。
また日頃よく接する人の顔と似た顔の好感度が高く、他人からの評価の高い顔を魅力的に感じることもわかっている。
「イケメン好き」は他人からの評価の高い顔を魅力的に感じているだけ
イケメン好きは、実は他人からの評価の高い顔を魅力的に感じているだけで、生き物としては身近にいる自分の顔に似た相手をパートナーに選ぶと言ってもそう間違ってはいない。その中で、より左右対称の顔の相手を選別するのだろう。
広島大学の『女性と男性の恋愛観・結婚観に関する意識比較』によると、女性は年齢が上がるにつれて、出会いには運命的なものを求めるものの、付き合うとなった場合には結婚を前提とし、浮気をしない・経済力があるにポイントが高い傾向がある。
「結婚に幸せを求める人の場合、女性はお見合いではなく恋愛結婚を望んでおり、男性は相手の容姿よりも貞操観念の強さを重視している」「『結婚と恋愛は別』と考え方を持つ女性は、男性の条件を重視しており、愛情の深さよりも安定した結婚生活を持続できるかどうかを重視している」(同)。
自分と似た顔かたちの相手で、経済力のある相手と運命的に出会う。そう考えるなら、イモトの結婚にも納得できるというものだ。付き合う相手を選ぶときも、そういう相手を選ぶのが案外と正解かもしれない。
【参考】
『The evolutionary psychology of facial beauty』Rhodes G』
『顔の魅力研究の現在』東京大学大学院・高橋翠
『顔の魅力知覚に関する実験心理学的研究』東京大学大学院・三枝千尋
『女性と男性の恋愛観・結婚観に関する意識比較』広島女学院大学・三木幹子ほか


