女友達と恋愛の話をするのは楽しいものです。でも、どう考えても別れた方がいい相手とズルズル関係を続けている相手に親切心から「別れた方がいい」と伝えたのに、全然言うことを聞いてくれないどころか激怒‥‥なんてこともありますよね。良かれと思って言った正論が、相手に伝わりにくいのはなぜなのでしょうか? 哲学ライターの宮野茉莉子さんが解説します。
宮野茉莉子

writer :

宮野 茉莉子
女友達と恋愛の話をするのは楽しいものです。でも、どう考えても別れた方がいい相手とズルズル関係を続けている相手に親切心から「別れた方がいい」と伝えたのに、全然言うことを聞いてくれないどころか激怒‥‥なんてこともありますよね。良かれと思って言った正論が、相手に伝わりにくいのはなぜなのでしょうか? 哲学ライターの宮野茉莉子さんが解説します。

友達から恋愛相談を受け、どう考えても別れた方がいい彼氏だと思ったので「そんなに辛いなら今の彼とは別れた方がいいよ」とアドバイスしたものの、友達から「ひどくない?」と返されたり、距離を置かれたり、その彼氏と同棲を始めちゃったり…。

正しいと思ったことを伝えたはずなのに、なかなか伝わらないどころか、関係がこじれてしまうこともありますよね。「正義は勝つ」なんてドラマもあったのに、なぜ正論は相手に通じにくいのでしょうか。

正論は相手を傷付ける!

正論・論破
ーーひどいことを言う彼氏と付き合っているなら、別れた方がいい。
ーー仕事が心身共に辛くて体調不良になるくらいなら、休職や転職を考えた方がいい、

そう思ってアドバイスしたのに、なかなか相手には通じなかったり、気まずくなったり、こちらが悪者にされてしまうことがあります。

正しいことを伝えるときに覚えておきたいのは、「正論は相手を傷付ける」ということ。正論は正しい意見ですから、つまり相手には「私の意見が正しく、あなたの意見は間違っています」というサインを伝えることになってしまうのです。

相手の立場に立って考えてみると分かりやすいでしょう。眠れない日もあるくらい自分なりに考え、試行錯誤したり、努力もしている。それでもうまくいかずに悩み、心身ともに弱っているときに、ズバッと正論を言われたら? 素直に「その通りだね」と受け入れて、すぐに行動にうつせる人はそう多くはないのではないでしょうか。

逆に「私の気持ちを全然分かってない」と思われたり、「言うのは簡単だけど難しいんだから。まぁ、あなたみたいな人には分からないよね」なんて攻撃をされることもあります。

また、いかにも正論という形で伝えてしまうと、相手は上下関係を感じてしまうもの。「意見の正しさ」よりも、「あなたと私、どっちが正しいか?」に論点が変わり、ケンカになってしまうこともあるのです。

そもそも正論は必ず正しいの?

そもそも自分の思う正論は、それしかない、唯一無二の正論なのでしょうか。

Wikipediaでは、「正論」について「道理を説く論について正しいものであると評価する呼び方である。事実に関する議論や認識論について用いられることはあまりなく、ほとんどの場合が「**であるべきだ」という当為についての論である」と説明しています。

正論を言う方としては「これしかない。これこそが正しい」と思って言うものですが、実は正論の数は人の数だけあり、多くの場合は「~すべき」「~せねば」で語られるものなのです。

たとえば、女性が働くことについて。専業主婦が主流となった1970年代以降は、女性は結婚したら仕事を辞め、専業主婦になるのが当たり前でした。当時は仕事を続けたいと女性が言っても、「女は家庭を守るもの」という正論が返されたでしょう。

現代では、共働きが当たり前の時代へ。「古い」「女は家庭を守るもの」なんていえば、男女差別だと非難されます。それは1970年代以前もで、当時は農業や漁業など第一次産業に就く家庭が多く、嫁は大事な働き手。嫁が働く代わりに、育児は祖父母がしていたという話を筆者の祖父母世代からは聞いたものです。

正しさは時代によっても、また環境、国、文化、個々人の性格や事情によっても異なるもの。現代でも、性格や環境によっては「女は家庭を守るもの」が正論となり得るケースもあるでしょう。正論は人の数だけあり、「これこそが正解」とは一概には言えないものなのですね。

答えを本人に探してもらえるように

それでは、悩みを抱える友人や恋人とはどう話したらよいのでしょうか。相手の頭の中は、自分の考えや気持ちでいっぱい!まずは相手の話をじっくりと聞いてみましょう。

つい口をはさみたくなるけれどストップ 。 口をはさんでしまうと、相手は本音を言えなかったり、心を閉ざしてしまうことも。また、正論を言うときに生じる「相手を変えよう」という意識も、捨てましょう。相手が変わるかどうかは、あくまで相手が決めることなのです。

話を聞きながら、「相手の都合や本音、目的」を観察してみましょう。オウム返しのように深堀りしてみると、相手が自分で気付くこともあるでしょう。ベストは本人に気付いてもらうことです。

とはいえ以前カウンセラーに、「タイミングは人それぞれで、腑に落ちるタイミングがその人のタイミングなのです」といわれたことがあります。その人がタイミングにきていない時は、いくら正論を言っても、話を聞いても、気付かないでしょう。

自分の正論に自分が傷付くことも

ちなみに、覚えておきたいのが、自分が言った正論に自分で傷付くことです。

友人には「そんな彼氏とは別れなよ」とアドバイスできても、いざ自分となると、「でも優しいところもあるし」「彼がいないと誰にも認めてもらえなくなって不安」なんて悩むなんてことも。当事者と当事者以外の間には、大きな壁があるのですね。

正論は他人も、自分を持傷付けるもの。正論を言って相手を変えようとするよりは、話を聞いてサポートする方が良いでしょう。

Photo:Gerd Altmann



宮野茉莉子

東京女子大学哲学科を卒業後、証券会社で営業を経験。2011年よりフリーライターへ。 大学時代に学んだ哲学にハマり、哲学を交えた記事を執筆。悩んだら哲学本を開き、哲学者と一緒に考えるのがライフワーク。好きな哲学者はニーチェ、ハイデガー、西田幾多郎、鈴木大拙、マルクスアウレリウス。 哲学の楽しさを老若男女に伝えるこのが人生の目標。 京都と音楽も好きな3児の母。

関連記事

カテゴリー