見つめあう男女
先日、男性ボーカルグループのメンバーが、過去のDVが原因で芸能界を引退しました。しかしDV被害者に対して「そんな男と付き合うなんて、あなたの見る目がなかっただけじゃない?」なんて心ない言葉を投げかける人がいます。でもそもそも“人を見る目”なんてスキル、存在するのでしょうか?
Lily-Jay編集部

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Lily-Jay編集部

「自分の夫や彼氏がこんなにひどい人で…」と女性が訴えたとき、少なくない割合でこんなことを返す人がいます。

「そんな男と付き合ったあなたが悪い」
「あなたの見る目がなかっただけ」

自分は人を見る目があると言わんばかりのセリフですが、さて。

「人を見る目」なんて本当に存在すると思いますか?

“恋人にしか見せない顔”を恋人になっていない段階で見抜くことは難しい

男性に掴まれる女性

先日、とある男性ボーカルグループのメンバーのDVや借金報道がありました。
そのメンバーはグループを脱退して芸能界を引退することになったわけですが、そこで他のメンバーが口々に語っていたのが「こんなに長く一緒にいても、彼の本質には気づけなかった」「こんな人間だとは思っていなかった」ということでした。

DVやモラハラなどは、親しくなった恋人や結婚相手にしか出さないもの。
恋人だけに見せる顔”というのは、単なる友人や仕事仲間が伺い知ることは難しいのです。
ですので、そこが見抜けないからといって「自分は人を見る目がない」と悔いる必要はありません。

「私は人を見る目がある」という人は、たまたまそんなクズを引かなかっただけに過ぎない。ましてや「人を見る目がないお前が悪い」なんて言葉をかけて、他人を傷つけていいものではありません。

「人を見る目」なんてものは存在しない。
まず、ここをはっきりさせておきましょう。

人を見る目は存在しないが、クズ男の兆候はある

さて、それではクズ男を見抜く方法はまったくないのでしょうか?
結論から言うと、まったくないことはないのです。
それは“兆候”を見逃さないこと。
それは、“ほんのちょっとの違和感”という形で現れます。

あれ?
この人、こんな人だっけ?
という、とても些細な違和感。

DV被害に遭った人に話を聞くと、本格的なDVを受ける前に必ずといっていいほど「あれ…?」という兆候があります。
倉田真由美の漫画『だめんず・うぉーかー』では、その違和感を“神様がくれた瞬間”と呼んでいました。

DV被害に遭った人が語る、それぞれの“神様がくれた瞬間”

それではその“神様がくれた瞬間”には、どんなものがあるのでしょうか?
2つのDVの事例を紹介しながら紐解いていきましょう。

カードを持つ指

結婚相手に経済DVを受けたAさんの場合

最初に紹介するのは、結婚相手に経済DVを受けた会社員のAさん(29)の事例です。

「私が最初に『あれ?』って思った瞬間は、付き合ってしばらくしてから『君とのデート代のせいで貯金が減った』と笑いながら言われたことですね」

数千万の貯金があると自慢していた某有名メーカー勤務の彼(38)が、100万円ほど残高が記載されたATMのレシートを見せてきて「Aちゃんとのデートのせいで、普段使いの口座の方のお金が100万切りそうなんだけど~」と冗談っぽく言ってきたのだそうです。

そこで「?」となったAさん。

「私が彼におねだりしたことは一度もありませんでしたし、食事もいつも割り勘だったのでびっくりしました。高価なプレゼントをもらったこともほとんどありません。まぁ、彼は車で1時間半の距離を毎週通ってきてくれていたので、ガソリン代は普段よりかかったかもしれませんが…それって“私のせい”なんですかね?」

不思議に思ったAさんですが、彼にとって生まれて初めての彼女だということも聞いていたため、「デート代の相場を知らないだけなのかな」と思って流したそうです。

Aさんはその後、彼にプロポーズを受け、結婚。
しかしその後も違和感は続きます。

「結婚式では向こうが『遠い親戚も呼ぶから』と勝手に人数を決めたせいで大きな式場を借りる必要ができ、新婚旅行も『全食に食事がついていないと嫌だ』と一番高いツアーに決められましたが、そのときも『Aちゃんがこれがいいって言うから』と全部私のせいにされました。費用はどちらもきっちり半分ずつ出すことになり、約200万の出費。その後も彼が新築マンションを買ったので家具を買えと言われ200万要求されました。結局、結婚のタイミングで累計で400万ほど負担しましたね…」

Aさんの結婚前の年収は約300万。地方出身の一人暮らしOLだったAさんにはきつい出費で、足りない分は実家から支援してもらったそうです。

結婚後、Aさんは仕事をやめて専業主婦に。

しかしそこから経済DVが始まりました。

「生活費は全部彼が管理していました。私に現金を渡すと無駄遣いするからといってお金は渡されず、スーパーで食材を買うときは彼のカードで支払いました。何に遣ったかはこまかくチェックされ、食費以外のことで使うとネチネチと追及されました」

美容院代、化粧品代、服代、携帯代はAさんの独身時代の貯金から出していましたが、既に結婚式や新婚旅行でお金を吸い上げられた後だったため、とても苦しい生活だったそう。

「たった千円の化粧水ですら、使うのに躊躇してチビチビ使っていました。美容院は年に一度しか行けず、ずっと伸ばしたままでしたね」

さらに夫は、食費や光熱費、家賃などの生活費の半分を、Aさんの借金として計上し始めたのだそうです。

「彼が毎晩にらめっこしているExcelを覗いてみたところ、30年先までの収支が記載されていました。そしてそこでは、毎月12万円を私が彼に借金していることになっていたんです」

この月12万円の借金は、まだできてもいない子供が産まれて手が離れた後に、Aさんが働いて返す計算になっていたといいます。

「このままでは一生、彼からお金を要求され続ける」

ぞっとしたAさんは、彼のもとから逃げ出しました。

その後、大揉めに揉めたものの離婚が成立。

大手企業の社員で一見とても人当たりのいい人だったため、周囲からは「なんで?」と大騒ぎされたそうですが、Aさんに後悔はまったくないといいます。

その後、Aさんは元夫とはまったく真逆な相手と再婚し、今は幸せな結婚生活を送っているそうです。

暴れて壁に穴を開けた彼氏を持つBさんの場合

次に紹介するのは、家の中で暴れるDV彼氏(29)を持つ派遣社員のBさん(28)です。

「彼と最初に会ったとき、なんて無口な人だろうって思ったんです。前の彼氏がチャラチャラしたヒモ男だったのもあって、その無口さがカッコよく見えましたね」

彼は口下手だったものの、とても熱烈なアピールをしてくれたそう。誕生日には年齢分のバラを買ってプレゼントしてくれたとか、会うたびにかわいいとほめてくれるとか。寡黙な彼の情熱的なアピールに、Bさんは舞い上がりました。

「おかしいなと思ったのは、私の友達の前での態度でした。大勢で会話していても絶対に自分からは話しかけないんです。彼が私にぼそぼそと話して、それを私が彼のかわりに皆に告げる。まるで通訳みたいでした。なのに、ちょっとでも私が他の人と話して彼を放置すると、すごい不機嫌になるんです。喋らないのは自分のせいなのに。他人とのコミュニケーションがとにかく苦手なんだろうな、ってそのときに思いましたね」

そんな彼ですが、とある企業の社長をしているのだそう。
そこまでコミュ障で、仕事できるの?

「それが、仕事の場では普通に喋れるんです。でも普通の雑談が無理。気持ちを言葉にするのがとにかく苦手みたいで」

そしてその「気持ちを言葉にできない」が最悪の形となって表れます。

「先日、ちょっとした口論になったんです。実は私、付き合ってる人の携帯を見る癖があって。こっそり覗いたら、彼が家にデリヘルを呼んだ痕跡があって…。そこで問い詰めたら、彼が豹変してしまって」
Bさんもなかなか最低ですが、その後の展開も衝撃でした。

最初は落ち着いてぼそぼそと言い返していた彼。

しかし口が達者なBさんに詰められると無言に。そこから何か言おうとしてはやめ、を繰り返したのち、フーッフーッと呼吸を荒げるとドカドカと音を立てて洗面所へ向かい――
「そこからガシャーン、ガシャーンって、聞いたことがないような音が聞こえて。びっくりして私は固まったままだったんですが、それからドアの音がバターンと鳴ったんで、ああ出ていったんだなと思って。それで洗面所をおそるおそる見に行ったら……こんな風になってて」

涙ぐみながらBさんが見せてくれたスマホの画面には、大きな穴が開いた壁が。

壁にあいた穴

「結局その日は帰ってこなくて、聞いたら会社に泊まったそうです。もしかしたらまたデリヘル呼んだのかもしれないけど」

苛立ちのあまり一言多くなっているBさんですが、その後仲直りできたのだそう。

「しばらくしたら気が済んだのか、ふらっと戻ってきてすごい謝ってくれました。前に私が好きだって言ってたショップのスイーツをわざわざ買ってきてくれて、いっぱい話し合って。ケンカする前より仲良しになったんですよ♡」

実はその後も何度か同じようなケンカをし、そのたびに窓ガラスやゲーム機などが壊されては仲直りし、を繰り返しているBさんカップル。ここまでいくとプレイなのかも、という気もしないでもないですが、彼が暴れているときは怖くないのでしょうか?

「怖いですよ。いつか自分に来るかもしれないって思うし。でも普段は優しいし、追い詰めすぎちゃった私も悪いかなって思うし…」

DV加害者は「被害者が悪い」と“本気で”思い込める

指をさす男性
AさんのケースもBさんのケースも、そして多くのDVのケースもそうですが、加害者が被害者に対して送るメッセージは一貫して「お前が悪いから俺がこんなことをする」です。

そしてその支配的な兆候は、普段の何気ない会話の中に潜んでいます。
Aさんの場合は「俺がお金を遣ったのは君のせい」。
Bさんの場合は「俺の気持ちを汲み取らない君が悪い」。
自分は善で相手は悪。だからこそ、どんなに酷いことでもできるのです。

独りよがりなルールの“自分は善で相手は悪”
神様がくれた瞬間を見抜くポイントは、この“「独善的な考え」をしがちな人かどうか”にあるように思います。
これを少しでも感じたら、相手がDVをする人かどうか観察してみましょう。
そして「ダメだ」と思ったら回れ右。

不幸な恋愛は泥沼のように絡みついて、抜け出すのに苦労します。
舞い上がっているときにはなかなか難しいものではありますが、「あれ…?」と思ったら早めに撤退するということを心がけておきましょう。

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