新規会員登録はこちらから

【部屋とブスと私#2】メラニンに愛を込めて。

メイクアップアーティスト高橋秋人の部屋とブスと私
LGBTのGで、メイクアップアーティスト、そして自身も俳優として活動している高橋秋人さんの連載「部屋とブスと私」。
今回は「年齢」と「生き方」のお話です。あなたは過去の自分に恥じない生き方、してる?

自分の人生をどう生きよう?」これは、誰もが直面するテーマだと思うの。
私なりの人生の教訓は「なりたい」は「なれない」。これはネガティブなわけではなく、ただの教訓。
「やれること」と「やりたいこと」、そして「やるべきこと」と「求められること」は違う。
だけど「やれること」は「やりたいこと」に、「やるべきこと」は「求められること」に繋がる。                                  
だからすこーしだけ、日常にマンネリを感じたら自分にこう問いかけてる。「あなたは今、何ができる?」「何をしてる?」「何をすべき?」って。まあそう簡単に答えなんて出ないんだけどね(笑)。

時の流れるままに。

だいぶ前の話だけど、同級生にこう言われたの。「秋人は夢があっていいね。」って。
で、そのときにこう思った。
夢を見てる頃が一番幸せだったわ」って。

俳優を志したのは中学2年生の頃で、『スクリーム』っていう映画に影響を受けたことがきっかけだった。実家にたまたま残っていた当時の学級通信を久々に見てみたら、こう書かれていたの。
10年後は、映画スターになって世界中を飛び回っているかな。
あーそういえばそんなこと書いたなって思い出したんだけど、実家でそれを読んだのは24歳のとき。学級通信のテーマは「10年後の自分」。書いたのは14歳の私。

……10年。
振り返ると月日はあっという間ね。10年って聞くとシンプルに長く感じるけど、日々を生きる中で10年先を想像しながら「あー長いなー長いなー」って生きてるわけではない、でしょ?(笑)。私は今を生きるので精一杯(笑)。

学級通信を読んだときにこう思った。たとえ10年前の自分が目の前にいたとしても、こう言えるって。
想像していたような映画スターにはなってはいないけれど、なんとかまだその世界にはしがみついてる。思っていた道とは違うだろうけど、まだ道は変わってない」。
10年もあれば、人は変わる。変わるときは1年、半年でも、いやもっと早く変わることだってある。
で、24歳の自分なりに「14歳の自分に恥じないように生きられているのか?」と考えたときに、「思ったより恥じずに済みそう」って思ったわ(笑)。

で、もうすぐ私は34歳になるけど、つまりはあれから20年。
10年前の自分に恥じずにいられたときから、ちょうど10年……さて、今は!?

「どう生きるか」と「どう生きたか」。

メイクブラシを持つ高橋秋人
人生は100年時代。そう考えると自分はまだ約3分の1程度しか生きていないわけだけど、大切なのは「どう生きるか」よね。
今ではメイクアップアーティストとしても活動できている私ですが、24歳の自分は「芝居だけで生きていく!」って思っていたから、そこからの10年で大きく流れが変わったわ。舞台の演出家からの一声でメイクアップの道に進み、今ではそこを武器にこうして語る場も頂けてる。
20年前の自分には何が言えるのか、考えてみたけど、うーん。……同じね(笑)。「まだ映画スターにはなれていないけれど、なんとかその世界にはしがみついてる」って(笑)。

10年後から更に10年経ってもそうだった。けど、「やれることと求められることは増えてるから、その分やりたいこともやるべきことも増えて楽しいわよ」って言い足せる10年だった。

でもこれは、あくまで区切りごとに振り返る「どう生きたか」って話。
問題なのは「どう生きるか」よ(笑)。ほんと大変!

「将来どうなりたいの?」と聞かれることが最近よくあるのだけれど、以前は「お芝居を!」って間髪入れずに言えたのに対し、今は「うーん……」って言い淀んじゃう。けどね、別に迷走してるわけではないのよ(笑)。ただ何かに絞るのが難しくなったってだけで、今は何でもやれちゃう時代だから、正直将来どうなりたいかなんてわからないし、なるようになるとしか言えないのよね。

そりゃだって日々の生活は無視できないもの。やりたいことのために、目の前の現実を見ないなんてことはできない。誰だってそうなはず。もちろん、その現実だけに縛られてしまうのもいけないのかもしれない。何かを諦めざるを得ない状況だってある。それでも誰かが人生の道を広げてくれることがあって、チャンスを掴むことだって可能なハズ。でしょ?

ただ、文頭で触れた同級生から言われたこの言葉。
「秋人は夢があっていいね」。
これを思い出すと、そうね、夢を見ていた頃が一番幸せだったと思うわ。
だって、だって夢の世界の自分は現実をすっ飛ばしてるから。

夢の中では家賃の事や生活費の事なんて考えていないでしょ?(笑)。
今、生きているのは現実。まがりなりにも夢見た世界で生きている私にとってのね。だから理想ばかりではやっていけない。地に足をつけてというか、だからと言って浮足立つわけにもいかないわけよね。それが自分の選んだ仕事だから。こうなりたい、ああなりたい、ああしたい、こうしたいはとても大切。けど人生は決して平等ではないわけよね。だからこそ焦るし、悩むしで、大変。
それでも「どう生きるか」はずっと大事にしたいの。「どう生きたか」という結果のために。何より過去の自分に恥じないためにね。 

美意識がもたらすもの。

メイク中の高橋秋人
メイク・化粧と聞くと「女性」を意識して聞こえちゃうかもしれないけど、スキンケア・基礎化粧と聞くと「男性」も抵抗はなくなるかしらね。
「身だしなみ」、前回の記事でも書きましたけど、今は老若男女問わず美を求められる時代。「どう見られたいか」という主観から「どう見られているのか」という客観に視点が切り替わったということ。

結果的に言えば、主観も大切だけど、主観だけでは他人を置いていってしまうわよね。かといって客観視点ばかりでも、今度は自分自身を置いていってしまうわ。バランスが大事。

意識が変われば見た目も変わる。そして見た目が変われば人の目も変わるわ。何かを変えたいのであればまずは自分から。かく言う私も、今と昔では大きく違う。同級生からは「いい加減整形を認めろ」って言われるほどよ(笑)。けど、その過去を知らなければ、人は私を「モテモテの人生を送ってきた」と想像する。
生憎、モテモテなのは歳を重ねてからよ(笑)。それも30代になってから。

若い頃はやりたいことへの熱意が凄かったけど、できないことも多いのがジレンマだった。しかも、もがく自分が嫌で、若さ故の魅力でもある「勢い」みたいなものは欠けていた気がするわね。カッコつけたかったんだと思う。
大人になってからはできることが増えて、やりたいことへの熱意が分散されたけど、その分あっちへ、こっちへって「勢い」は増したわ。
大人になるって最高。歳をとるって、本当に素晴らしいことよね。

メラニンに愛を込めて。

よく「女性に年齢を聞くのは失礼よ」って聞くけど、これだけ平等を訴える世の中になった今となっては、逆もしかりだなと思う。男性にも聞いちゃダメよね。
そもそも、年齢を聞くのはどういうとき?
仕事において、キャリアを知るため?
それともキャリアではなく生きた年数でマウンティングをするため?

年齢を聞くという行為は、こんなふうにネガティブな要素を含んでいるわ。もちろん話の流れにもよるだろうけど、何より受け手の心構えにもよって、すごく嫌な質問にもなる。年齢を知られることが嫌だったり、歳を重ねることへの憂鬱な感情だったり。
だって、若い頃に比べて肌はどんどん垂れ下がってくるし、くすんでシワも増える。メラニンに憎しみだってわく。でしょ? 外見に対してはネガティブこの上ないって感じ。映画やドラマのようなサクセスライフなんてそうそうないから、つい周りと比較しちゃう。

そう、これは自分の年齢にポジティブになれない本人の問題でもあるわけ。
だからそんなときは、「人生は、自分が主役のドラマだ」って思ってみるといい。映画だと短すぎ。まさに年齢の分のシーズンが続くドラマ。私は今33だから、つまりは今はシーズン33なわけ(笑)。そして、もうすぐシーズン34が始まろうとしているわ。

出会いもあるし別れもあるし、成功も失敗も、とにかく紆余曲折色々あって…まさにドラマ。で、ドラマだと思えばこうも思えてこない? 悲観的でネガティブな人が主人公のドラマなんて、視聴者受けが良くないかもって。どうせなら視聴者ウケするものを作ってヒットさせたくない?(笑)私はヒットさせたいわ。だって、自分が主役なんだもん! 打ち切りは嫌。

朝起きたときからカメラが回ってる、台本はないけど、その日の行動はト書きだし、行き交う会話は全部台詞なわけ。過去を振り返るのは、その作品を観るときよ。要するに、現実を生きてる今はまさに撮影中なの。全員が俳優ね。

役に合わせたメイクもスタイリングも全部自分で好きなように決められる。セルフプロデュースよ。シーズンが続けばそりゃ刺激的な展開も必要、衝撃の結末とか、何かのリスタート。恋愛に仕事にとにかくもうなんでもありよ。そう考えたら楽しくなってこない?

鏡に向かっているときも、カメラが向いてるからね。そんな表情でいいの? 道を歩いてるときだって。そんな姿勢で平気? もう少しスマートに魅せなくっちゃって思わない?
どう? どんどんワクワクしてくるでしょう。自分が主役のドラマを生きる自分。メラニンだってシワだって、積み重ねたシーズンの数だけ増える勲章よ。

落ち込む日だってたまにはあっていい。だってドラマだもん。そういうシーンも必要。だけど立ち直るエピソードも描かなくちゃ。でしょ?
今からでも内容は変えられる。そう、たった今からでも。好きなストーリーを作って。で、そのドラマを観て振り返る。そして、考えるの。次は、どんなシーズンにしようか? って。だって、あなたは自分の「人生」というドラマのプロデューサーなんだから!

高橋秋人

187 views

俳優/メイクアップアーティスト/脚本家/演出家/メイク講師 高校卒業後すぐに舞台に出演し、活動を開始。以降舞台、映像作品に出演する傍ら、知り合いの舞台演出家...

プロフィール

関連記事一覧